第9章

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「あの…私あの時、熱もあって頭がボーっとしてて、 自分が言ったことも、うろ覚えで…、 突き指の話の後のことは、その…夢なのか現実なのか分からないくらいで…」 「うん?」 「だから、あの…この前の事は、気にしないで。」 「え…」 「…私も、初めは忘れてたくらいだし…だから加瀬くんも、この前の事は…忘れて…」 「……」 「なかった事にしてくれて…いいから…」 俯いて一気に言ってしまったが、何も言葉を返してこない加瀬くんが気になって、私はゆっくりと顔を上げる。 視界に入ってきたのは、拗ねたような怒ったような表情を浮かべた、加瀬くんの顔だった。 「広崎は、忘れたいの?この前の事。」 いつもより強い眼差しで見つめられ、ドキッとする。 「…あ…あの…」 「いいよ。広崎が、なかった事にしたいなら、それで…」 「加瀬…くん…」 「だけど…」 加瀬くんは私から目を反らさずに、真っ直ぐに見つめて言った。 *
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