33人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「あの…私あの時、熱もあって頭がボーっとしてて、
自分が言ったことも、うろ覚えで…、
突き指の話の後のことは、その…夢なのか現実なのか分からないくらいで…」
「うん?」
「だから、あの…この前の事は、気にしないで。」
「え…」
「…私も、初めは忘れてたくらいだし…だから加瀬くんも、この前の事は…忘れて…」
「……」
「なかった事にしてくれて…いいから…」
俯いて一気に言ってしまったが、何も言葉を返してこない加瀬くんが気になって、私はゆっくりと顔を上げる。
視界に入ってきたのは、拗ねたような怒ったような表情を浮かべた、加瀬くんの顔だった。
「広崎は、忘れたいの?この前の事。」
いつもより強い眼差しで見つめられ、ドキッとする。
「…あ…あの…」
「いいよ。広崎が、なかった事にしたいなら、それで…」
「加瀬…くん…」
「だけど…」
加瀬くんは私から目を反らさずに、真っ直ぐに見つめて言った。
*
最初のコメントを投稿しよう!