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「俺は、忘れないよ。」
「…加瀬…くん…」
「なかった事になんて、できない。」
「……」
加瀬くん…どうしてそんな事言うの?
それにまるで、怒ってるみたいな言い方…。
「好き」て言ってしまった事を忘れて、て言った事が、
どうして加瀬くんを不機嫌にしてしまったのか、分からない。
余計な事、言わなければよかった。
…私…嫌われちゃったかな…。
じわりと涙が浮かんできた私が、ズル、と鼻水をすすると、
加瀬くんが慌てたように、目を見開く。
「…え…広崎?」
「……」
「……泣いてる?」
「…違うの、何か…」
「…ごめん、俺何か、強い言い方して…」
「ううん…私の方こそ、ごめんなさい…」
「え…」
「…加瀬くんを…困らせるような事言っておいて…、
忘れてなんて、勝手な事言ったりして…」
「広崎、ちょっと待って…」
「…本当に、ごめんなさい…。」
ずっと俯いたままの私の頭上に、加瀬くんの柔らかい声が降ってくる。
「広崎、こっち向いて。」
おそるおそる顔を上げると、予想していたのとは違う、照れたような加瀬くんの顔が、私を待ち受けていた。
*
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