第9章

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「俺は、忘れないよ。」 「…加瀬…くん…」 「なかった事になんて、できない。」 「……」 加瀬くん…どうしてそんな事言うの? それにまるで、怒ってるみたいな言い方…。 「好き」て言ってしまった事を忘れて、て言った事が、 どうして加瀬くんを不機嫌にしてしまったのか、分からない。 余計な事、言わなければよかった。 …私…嫌われちゃったかな…。 じわりと涙が浮かんできた私が、ズル、と鼻水をすすると、 加瀬くんが慌てたように、目を見開く。 「…え…広崎?」 「……」 「……泣いてる?」 「…違うの、何か…」 「…ごめん、俺何か、強い言い方して…」 「ううん…私の方こそ、ごめんなさい…」 「え…」 「…加瀬くんを…困らせるような事言っておいて…、 忘れてなんて、勝手な事言ったりして…」 「広崎、ちょっと待って…」 「…本当に、ごめんなさい…。」 ずっと俯いたままの私の頭上に、加瀬くんの柔らかい声が降ってくる。 「広崎、こっち向いて。」 おそるおそる顔を上げると、予想していたのとは違う、照れたような加瀬くんの顔が、私を待ち受けていた。 *
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