第11章

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……まだ、ドキドキしてる。 駅まで送ってくれた加瀬くんと別れてから、もう数時間経つのに、私の胸の鼓動は落ち着きを取り戻してくれない。 ううん、違う。 私の心が、落ち着いてくれないのだ。 加瀬くんが、私のことを好きだと言ってくれた。 『俺の彼女になってくれる?』 はっきりとした言葉もくれた。 包み込むように、ぎゅっと抱き締めてくれた。 おでこへのキスを思い出すだけで、火がついたように赤くなってしまう。 それから……手…。 私は自分の手を、ぎゅっと抱き締めた。 帰り道、加瀬くんと私はずっと手を繋いでいた。 繋いだ手から、お互いに好きな気持ちが伝わってくるようで、たまに訪れる沈黙も全く気にならなかった。 駅に着くと加瀬くんは、名残惜しそうに手を離して言った。 「もう着いちゃったな。」 その言葉が嬉しくて、くすぐったくって、私は自然に顔をほころばせた。 あまりにも心が満たされた、甘い時間を過ごしてきたので、あれは現実だったのだろうかとさえ、思えてくる。 ずっとずっと好きだった加瀬くんに、思いが通じて、澄んだ瞳で見つめられて……夢みたい……。 夢心地の私に、 さっきまでの事は夢ではなく現実だと教えてくれるかのように、 加瀬くんからメールが届いた。 *
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