17人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※※
私は、あの時の猫を“まる”と名付けて一緒に暮らして、もう三年がたっていた。
相変わらず、息子からは連絡もない。
もう私も、来月で定年を迎える。
“まる”は、飼われているくせに、態度が大きい。
あまり、膝に乗るなんてことはない。
抱かれるのも、好きではない。
ただ、してほしいことがある時は、上手に甘えてくる。
その時のしぐさ、目つきはもう可愛くて、言うとおりに動いてしまう。
言うとおり、というのもおかしなものだが、たまたま私が“まる”の気持ちを感知して、望むことをしてあげたということだろう。
それくらいに、気持ちがわかるくらいに、好きになってしまっていた。
来月になったら、“まる”といつも一緒に過ごすことができる。
ゆったりと昼寝でもしようかな、一人と一匹で。
※※※※
そんな時に、“まる”は病気になった。
私が退職してからは、ほとんど寝たきり状態。
だけど、水を飲ませてあげて、ご飯を食べさせてあげる、毎日介護した。
一か月くらい、そんな状態が続いた。
そして、昨日からは水も、ご飯も受け付けてくれない。
不安で、心配で、私は何も手につかない。
この子を諦めなければならないのだろうか。
最初は、少し飼うことをためらっていたが、一緒に生活した時間は幸せだった。
あの瞳で見つめられると、ついついおやつをあげてしまう。
“まる”に使った私の時間は、一人の寂しさを忘れさせてくれた。
最近は、一日中“まる”の事を考えている。
ついつい泣いてしまいそうになる。
そんな時、電話がかかってきた。
最初のコメントを投稿しよう!