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二
飛行機やホテルは真人の分まで佐伯が手配してくれたらしい。気づけばすでに空の上だ。羽田空港からおよそ二時間半で那覇空港へと飛行機は着陸した。
「上着脱いでおけよ」
関東はとうに秋の気配を感じ始めているというのに、沖縄では季節が一つ巻き戻ったかのような暑さだった。それでもジメジメとした湿度の高い暑さではないためか、半袖一枚で過ごしやすい。
「今日このまま撮影に行くんですか? 疲れは大丈夫ですか?」
いくら外出に慣れてきたとはいえ恭介にとって隣と席と密着度の高い飛行機や、混雑する空港はかなりのストレスだろう。
「ああ、もう撮影スタッフが待ってるからな。俺が着かないことには仕事にならないらしい。ホテルに荷物置いたらすぐ出よう」
「俺も行くんですか?」
「当たり前だ。撮影終わったら観光だろ?」
朝一番の便に乗ってきたため人の姿もほとんどないようだ。人の声はあまりしなかった。夏休みの間は観光客で賑わっている空港も、ようやく一段落と言ったところだろう。
三十分ほど車で走ると赤っぽい造りの建物が見えてきた。近づいてみるとコテージ風のホテルだとわかる。
「真人。部屋こっちだ」
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