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恭介の声がする方へと歩いて行くと、段差があったことに気づかず足を進めてしまいバランスを崩した。ああ、またかとギュッと目を瞑り倒れる衝撃を待っていると柔らかい身体に抱き留められる。
「大丈夫か? ああ、こういう木とかもわかりにくいんだな」
どうやら真人が足を取られたのは木の根だったらしい。つま先で確認してみると、確かに盛り上がっている部分があった。
「ありがとうございます……」
ため息をつきたくなった。助けられていることに不甲斐なさを感じていると恭介が知れば傷つく、ため息の代わりに唇を噛んだ。
恭介のせいじゃないのだ。これは真人自身の問題だ。
誰かに助けてもらわないと生きていけないなんて、そんなの。今まで自分は障害者だから仕方がないのだと諦めていた部分があった。けれど恭介に出会って、こんな自分でも何かできるかもしれないと勇気をもらった。
──でもやっぱり……助けられるたびに情けなくなる。できないことばかりだと気づかされてしまう。
「真人? どうかしたか?」
「いえ……」
笑顔を受かべていれば、誰にも心配をかけないで済む。ヘラっと口元を緩ませて笑うと、言葉を詰まらせた恭介のため息が聞こえた。
「休ませてやれなくて悪いな。もう出られるか?」
「大丈夫ですけど……本当に俺も行くんですか?」
「嫌か?」
「イヤとかじゃなくて、仕事なのに迷惑かと」
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