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世話になっているのは真人の方だ。何もできないのに給料まで貰っているのだから。
「迷惑だなんて。こちらこそ恭介さんにはいつもお世話になってます」
真人は立ち上がり佐伯に向かって頭を下げた。真人が恭介と付き合っているのも知っているらしい。反対はされていないと恭介は言っているが、本当は佐伯こそ恭介に結婚して普通の家庭を持って欲しいと願っているのではないだろうか。
幼い頃から家族に苦しめられてきた恭介を知っているからこそ普通の幸せをと、真人にはそう思えてならない。
いくら考えたところで佐伯の本心はわからないが、穏やかで丁寧な話し方は恭介への愛情に満ちているのは確かだ。
「座ってて。私も隣いいかな? 恭介はもう撮影に入ってるから、その間特にすることもないしね」
「あ、はい」
「君は凄く綺麗な子だね。女の子だったら恭介の撮影相手にしたかったぐらいだよ。今日撮るテーマは恋人たちのデート風景だからさ。ああ、あとで恭介と一枚撮ってあげよう。記念になるだろう?」
女の子だったらという言葉が胸に突き刺さった。そう女の子だったら何も問題はないのに。そんなことは初めからわかっていたことじゃないか。
それに──佐伯は真人の障害のことをどう思っているのだろう。
「いえ……大丈夫です」
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