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「真人くんは恭介との旅行楽しくないのかな?」
「え……」
「あまり浮かれて喜んでいるようには見えないからね。ああ、表情に出にくいタイプだったら申し訳ない」
楽しいか──と聞かれればどうなのだろう。恭介と一緒にいられることに幸せを感じているのは確かだが、不安や自分の不甲斐なさばかりが身に沁みる。
「教えてください。佐伯さんは……障害者である俺が恭介さんの足かせになるんじゃないかとは思わないんですか?」
男同士だけならまだしも、助けてもらわなければ生きて行くことすらできない真人は、ただ一緒にいるだけで恭介の足を引っ張ることになるんじゃないか。恐る恐る聞くと、佐伯の口から深いため息が漏れた。思わずコクリと喉が鳴る。
「そう思ってるのは君自身じゃないのかな? 私は君自身がしてきた苦労をまったく知らないけど、自分でここまでしかできないと限界を決めてしまうのはどうかと思うよ。実際君は……人一人の命を救ってるわけだし」
「命って」
それは大袈裟だ。真人はただ恭介に付き合って外に出ていただけなのに。
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