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ピピピ……ピピピ……ピピピ……小さな電子音が、鼓膜の向こうで聞こえてくる。やだ。まだ起きたくない眠い、俺は布団を離さない……ぎゅうと布団を抱き締めると、「痛ェ」という声が聞こえた。あれ布団って喋るっけ、そうか痛いかと心の中で答えて、ぽんぽんと優しく撫でてやる。
「……れ、なーがーれ」
「ん……」
ああ、俺の名前も知っている。ちょっぴりゴツゴツして硬い布団を再び抱き締めようとすると、肩を押された。あれ?
「朝から布団と間違えてぎゅー、は確かに美味しいシチュエーションだが、生憎自分がされるのには興味ねえ。相手がお前なのも全く萌えねえ。起きろ」
朝からヒドイことを言われた気がする……。ぼんやりとした意識の中で薄く目を開けると、既に制服に着替えた雫が俺を見下ろしていた。
「あー……おはようございます」
「今更恥じらうな馬鹿。起きたな? 先、行ってるぞ」
「はあい」
よい子の返事をして、ゆっくりと布団から起き上がる。朝に弱い俺を起こすのが、雫の一番の仕事だ。母のような男である。確か、雫はご飯も美味かった。
「絶対モテんのになー」
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