667人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って久遠くんは俺に新聞を見せてくれた。号外と大きく銘打ってあるそれは、ある種うちの学園の名物だ。学園行事等の全うな記事も多いが、誰と誰がどうのこうのという、名誉毀損とか大丈夫?と心配したくなるようなスキャンダルも扱っている。その新聞の一面を見ると、「季節外れの転入生!?」という見出しで、すっぱ抜きのような大きな写真が使われていた。俯き加減に廊下を歩く少年が、職員室に向かっているところだ。白黒写真じゃよくわからないけれど、線が細く、儚げな印象を受ける。
「でも男でしょー」
「そりゃあな」
礼を言って新聞を返すと、久遠くんは苦笑した。
「まあ、暇なんだろ、みんな」
久遠くんは、もしかしたら誰よりも冷静かもしれない。新聞を畳んでしまっているところを見ていると、ブレザーのポケットが震える。メールだ。
『超絶美少年ktkr』
送り主は雫で、写真が添付してあった。どこから撮ったのか、ドアップの写メ。癖のない栗色のショートカットに、ぱっちりとした大きな瞳、睫毛も長い。小振りな鼻に口角の上がった唇、桜色の頬――確かに、女の子も羨むような、可愛らしい顔立ちをしていた。
『いつの間に撮ったの』
俺は冷静な返信をする。
「確かに可愛いみたい。久遠くんどお、タイプ?」
久遠くんの反応が知りたくて、雫にもらった写メを見せる。首を傾げると、久遠くんは俺の携帯を覗き込んだ。
「俺はもうちょい、体格が良いほうが」
あ、久遠くんってガチ系なんだ。知らなかった。ちょっとショック……。不意に、手のなかの携帯が再び震えた。
『俺の情報収集能力嘗めんなよwww現物はもっと萌えるwww会長とラブシーンよろ』
『まだ生徒会入り決まってないっしょー』
最初のコメントを投稿しよう!