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午前中の授業を久遠くんの髪を眺めながらぼんやりと受けて、お昼の時間になって学食に行く。学食はいつも混んでいた。大体いつも、雫が席を取ってくれている。久遠くんは一匹狼なので、誘っても屋上に食べに行ってしまう。弁当男子らしい。素敵。
「流、ここここ」
俺が周りを探していると、聞きなれた声がして顔を上げる。案の定、雫が片手を挙げて待っていてくれた。俺も手を挙げ返し、雫が待つ席の方へ行く。
どん!
その時、胸元に衝撃を受けて視線を下げる。あ、なんか熱い。嫌な予感がしつつ下を見ると、床に尻餅をついた少年と、床に散乱したAセットの中身、そして俺のズボンには味噌汁の染み……。
「だ、大丈夫ですか!?」
高い声の持ち主を見下ろすと、どこかで見た顔だった。栗色の髪、大きな目、小振りの鼻……ああ、これが噂の、転入生。学食の真ん中で、食器が散乱した現状と、噂の中心になっている人物の登場に、周囲はざわざわと騒がしくなる。
「いや、俺はだいじょーぶだけど……君の方が大変じゃない、ご飯なくなっちゃったじゃん」
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