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ポケットを探ると、ちょっと怪しい広告の入ったポケットティッシュが出てきた。それでとりあえず、床を拭く。さりげなく濡れたズボンも拭くと、転入生らしい少年は、顔を赤らめた。
「そんな……俺は大丈夫です。……ええと、これ、使ってくださいっ」
「ありがとー」
「は、はい……!」
転入生からもティッシュをもらい、床に散らばったサラダやらご飯やらを拭く。結構派手にぶつかってしまった。お椀をトレイに戻して、転入生を見る。
「多分ね、おばちゃんに落としちゃったーって言って可愛く謝れば、もう一回作ってもらえると思うよ」
はい、とトレイごと転入生に差し出すと、彼は赤い顔のまま頷いた。そりゃあ、これだけ派手に転んだら、恥ずかしいよねえ……。
「ありがとうございます……!あの、名前……」
「俺ぇ? 二年の鈴宮流、だよ。転入生くん」
笑いかけて、つい頭を撫でた。悪い癖だとよく言われるけど、小さい子の頭はよしよしってしたくなる。彼は耳まで真っ赤に染めて、頭を下げるとトレイを持っておばちゃんのところへ行った。よしよし、ズボンがびしょびしょだ。
「早速フラグ立てるとか、やるなあ」
「何それ、ただの事故でしょ」
「いやいや、転入したばかりで不安な転入生からしたら、お前は王子様に見えたんじゃねーかな」
「ズボンが味噌汁くさい王子様とか、ちょーヤダよね」
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