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「暁介さん?どうかしましたか?」
俺がタバコを咥えたまま動かないのを見て不思議に思ったのだろう。
「あ?いや、運命だったんだなと思って」
「運命ですか?」
「俺とお前は出会ったときからこうなる運命だったのかなって、な」
俺はにやりとしてアキを見る。アキは少し大げさに顎に手を当て考えて見せる。
「きっとそうですよ。私がポップコーンをもらったのも、知らない人について行ったのも、あの日しかないですから」
「もっと早く出会えてれば良かったな」
「そうですか?」
「なに、アキちゃんはそう思わねぇの?」
てっきりアキもそう思っているもんだと思っていた。
「はい、若い暁介さん見ても欲情出来るか微妙なんで
」
「欲情言うな」
「早く会っていても、きっと好きになるのはあの日だったと思いますよ。それが運命ってやつですもん」
まっすぐ、疑いもせず運命と言ってのけるアキ。他の女と違うというか、きっとアキはただただ、純粋なんだろうなと思う。
あの日の俺は、俺たちは確かにおかしかった。喫茶店で世間話している内に、あって間もない相手に自分の過去を、誰にも話したことがなかった秘密をどちらからともなく話していた。自分の全てを知ってほしい、そう思った。
お互いがいつもと違う行動を取った日。柄にもなく運命を信じてもいいのかもしれないと思った日。俺らが、共犯となる日。
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