妻3

5/7
前へ
/29ページ
次へ
どうしてかな、思いと口から出る言葉が違う。これも私の運命か。 「ねぇ、父さん」 「なんだ?」 「私、嫁いだら、もう父さんには会わないね」 「え?おい、秋華!」  私は部屋に戻った。ドアを閉めその場に座り込む。  目を閉じ、もう一度深呼吸をした。つうと涙が流れてきた。 「ふふふっ、意外と私は結婚に憧れを持っていたのか」  この日の私は今までで一番自分の気持ちがわかった。でも、その気持ちも表に出すことはなく、消してしまった。気持ちなんて、わかったほうがつらいのかも。だから皆は悩むのか。 「なら、気持ちに気付かないようにすれば、私は悩まなくても済むのかも」  私は顔を膝にうずめた。 「大丈夫、明日になればまたいつもの私に戻れる。大丈夫、何も思わなければこの人生もすぐに終わる。大丈夫、今日は色々あったから混乱してるだけ。大丈夫、大丈夫、大丈夫…」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加