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「どうして、世間のために我慢して生きなければいけないの?あなたの恥?知らないわよ。父が亡くなった今、もう我慢する必要はない。確かに暁介さんと出会わなければずっと一緒にあなたと暮らしていたかもね。何も感じず、自分を殺して。好きな人が出来た、仕方ないじゃない。隠れて二人の男と関係なんて持たずにあなたと別れるわ。あなたには悪いかもしれない、結婚式で偽りとは言え、一生を誓ったのだから。でも、世間にどうこう言われるからって諦めたくない。私の人生だもの」
私は立ち上がり、声を荒げて思いを告げた。
「僕は君を愛している」
ダメだ、止まらない。
「本当に愛しているの?15年間一緒にいて一人の女も惚れさせられなかったくせに。惚れていると思ったから特に何もしなくても大丈夫だと思った?私が、あなたに従順だったから、大丈夫だと思った?」
笑えてきた。そして涙まで出てきた。
「泣きたいのはこっちの方だ…なぁ、僕のことは嫌いなのか?」
まだそんなこと聞くのか。私はまたため息をつき、座った。
「そうね。暁介さんに会うまであなたのことなんとも思っていなかった。いえ、お金をもらっているから一緒に暮らしている、家政婦みたいな気持ちだった。でも、暁介さんに出会ってあなたは私の好みでないとわかったわ。結婚していなかったら、良くて友達の関係だったと思う」
「俺はお前がわからない」
嘘つき、わかろうともしていないくせに。
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