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数秒間沈黙が流れた。
「もうやめたら」
ずっと黙って聞いていたが、俺も話に加わることにした。
二人は俺の方を見てくる。
「別れればいいじゃん」
「お前も母親が不倫して捨てられた子と言われるぞ」
「別にいい。俺は悪いことをしていないんだから。それよりもこんなことがあって、今まで通り普通に暮らせんの?離婚しませんって言って母さんを自分の下に縛り付けて、愛した人を忘れさせて、嫌いな女の子供でなんとも思われていない自分と、その女に命令されてできた子である俺と3人で暮らす?考えただけでも嫌だけどね」
気まずすぎるだろ、絶対会話も何もない家になるわ。
「それが普通だろ。不倫したって、愛がなくたって、一度結婚したからには、僕が別れると言わない限り、一緒にいるものだろ」
「他と一緒にする必要なんてないじゃない」
母さんは自分の思いを全部ぶちまけたからかもう投げやりになってきているようだ。
「お前は黙ってろ。詠一、お前はまだ子供だからわかっていないだけなんだ」
さっき俺のこと子供じゃないって言ったくせに。
「俺は父さんが嫌いだ。母さんと一緒にいるのも父さんと祖母ちゃんを思い出させて悪いから一緒にいるつもりはないし。いいじゃん、みんなバラバラになれば」
俺は父さんに頬を打たれた。チラリと母さんの顔が見えた。少しだけ、悲しそうな顔をしていた気がする。
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