息子3

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「なんだそれ。僕がお前に、お前らに何をした?働いて、養って、好かれこそすれ、なんで嫌われないといけない?」 「仕事以外何もしていないからでしょ」  父さんは俺の胸ぐらを掴んだまま母さんを睨む。 「父さんさぁ、よく俺に言うよね。『さすが僕の子だ』って。あれ、凄い嫌いなんだ。虫唾が走るくらい。なんで俺の努力を全部父さんの遺伝子に持っていかれないといけない?俺が失敗したら『どうしてこれくらいできない』って言うだろ。そういう時は俺も父さんの真似をして、心の中でいつも思ってたよ。お前の遺伝子のせいだろって」 「お前、親を馬鹿にするのもいい加減にしろよ」  父さんは腕を振り上げた。また打たれる。そう思ったが痛みは来なかった。母さんが父さんを突き飛ばしたんだ。 「私は言ったわよ。詠一を部屋に行かせようって。あなたが詠一を大人と判断してここに残したんだから、手をあげずに意見を聞きなさいよ」 「お前ら二人は、どれだけ僕を馬鹿にしたら気が済む?」 「父さんが俺らを解放するまでだ」 俺と父さんは睨み合いを続けていた。母さんは鞄から離婚届とペンを出し父さんに差し出した。 「離婚してください」
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