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男2
「なんか今日機嫌いいな」
今日のアキはいつもよりニコニコしている。
「…離婚したんです。父が死んだからあの人から逃げることにしました。最近はホテルで初めての一人暮らし中なんです。ごめんなさい、私だけ…」
俺に悪いと思っているのかアキは少し俯いた。
「そっか。じゃあアイツとまだ繋がってる俺が結婚しようって言ったら断る?」
「いえ、お受けします」
驚いて目を見開きながらもはっきりと答えてくれた。
「本当は俺もけじめをつけてから告白したかったんだけど、お前はどこか行っちゃいそうで」
「暁介さんを置いてどこかへは行きませんよ。私にはもう、暁介さんしかいませんから」
「こんな情けない俺で悪いけど、結婚してください。今なら俺の苗字付き、ハート」
「暁介さんは情けなくないですよ。私の方こそ、バツイチで恥ずかしい。一児の母だし」
俺はアキに笑いかけた。アキは泣きそうな顔をしていた。
「バツ二にならないよう俺がちゃんと愛すから。だから、俺のそばにずっといて」
アキの目元から静かに涙が流れた。そしてコクコクと何度も頷いた。
「今、とても幸せです」
「俺も。結婚届は出会ってから1年の記念日に出しに行こう」
俺はアキの涙を拭ってやった。
「はい。なんか暁介さんが記念日とか気にするのってなんか意外ですね」
「ま、お前との運命の日くらいは大切にするやつだよ、俺は」
「あはは、やったあ」
「お前逃がさないためにぜってー指輪も買ってやる。今から行くか」
「はい」
俺はずるい人間だ。綺麗になったアキと変わらず汚いままの俺。
でもアキと一緒なら頑張れる。必ずアイツと縁を切るから。
俺は今日アキにプロポーズして、勝手に誓った。
「必ずけじめは記念日までにはつけるから」
「無理しないでくださいね。私は今でも十分幸せですから」
俺はアキの頭を撫でた。
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