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男1
「美味しかった」
アキは幸せそうに食後のコーヒーを飲んでいる。俺はだらしなく頬杖をつきながらその様子を見ていた。
「そりゃ良かった。これ吸い終わったら会計するからちょっと待ってな」
そう言い俺は灰皿からタバコを取る。
「あ、今日は私が」
「いいって。会ったこともない男の金で飯食いたくないって言ってるだろ?」
俺の言葉でアキの顔が曇る。会ったこともない男=夫のことを俺の口から言われるのが嫌らしい。なら毎回お金を払おうとしなければいいと思うのだが、奢られるのは罪悪感があるようだ。
「ごめんなさい。いつも奢ってもらって」
「別に。金に困ってないし、女に払わせるのもなんだし」
今まで付き合った女どもは最初は財布を出す素振りはするものの、慣れれば出そうともしなくなる。別に俺はそれでもいいのだが、アキは何度会っても初めて会ったときと変わらなかった。
アキの第一印象は変わったやつだった。
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