第一話 まほろばの温泉郷

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「わかんないって……もしかして、電車に乗ってきたのかな? ほら、そこに駅があったでしょ?」 「わかんない。本当だよ。ぼく、ウソついてないよ」  涙をぽろぽろこぼしている男の子がかわいそうになって、頭を撫でてあげようとあさひはそっと手を伸ばした。  すると、怯えたような顔で男の子は自分の頭をかばう。 「たたかないで。ぼく、ウソつきじゃないよ」 「たたかないよ。大丈夫」 「ほんと?」 「ほんとだよ。ほらね」  あさひがやさしく頭を撫でると、男の子はやっと安心したように表情をゆるめた。 「ぼくね、パパとママとまあくんといっしょに、キャンプに来たの」 「まあくん?」 「ぼくの弟だよ。まさとっていうんだ。きょねん生まれたばかりなんだよ。すごくかわいいんだ」 「そっか」 「でもね、車の中でね、まあくんがおもちゃでぼくのことをたたいてきたの。すごく痛かったから、ぼくがしかえししたら、ママにおこられんだ。ママは『けいくんみたいなわるい子には、おしおきね』っていって、ぼくを車からおろしたの」  男の子が身につけていたのは、コットン地の薄手の長袖Tシャツに膝丈のズボンだけだった。     
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