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対峙したアイリスは明らかに苛立っていた。
座った時からずっと自分の右の太ももを平手で軽く叩き続けている。表情も僕を睨みつけたままだ。この時点で平和的な話し合いはできないことを悟った。
なにぶん相手が軍服を着用しているせいか、緊張感が増す。
さらに、僕が座っている場所の隣にはお母さんロボが仁王立ちし、逃走は不可能。
まぁ既に今いる空間にはドアのようなものは見当たらず、アイリスからあの腕時計のようなものを奪う以外、ここから逃げ出すことなんてできないだろう。
ここは仕方なく自己紹介でもする方が賢明だと僕は判断した。
「僕の名前は一幸。数字の一に幸せで一幸。歳は15歳で見ての通り男だ。風呂に入ろうとして床に落ちてた石鹸で転んで気絶して、気がついたらここにいた」
そこまで言うと、お母さんロボが「ウソハツイテイマセン」とアイリスに告げた。
アイリスは不服そうだったが、小さく「続けて」といった。
「あとは何だろう。あまり興味はないかもしれないけれど、東京生まれ東京育ち…」
そこまでいった瞬間にパン!と乾いた音が響いた。
僕はその音の発生源を凝視する。
「ふざけたこと言わないで…」
少女がいつの間にか右手に持っていた拳銃らしきものの銃口は僕に向けられ、そこから煙りを燻らせている。
どうやら僕は発砲されたようだ。
あまりに唐突な非現実的行為に僕は動揺する。
美少女には似合わないその鉄の塊が現実なのか夢なのか理解が追いつかない。
とりあえず額に浮かんだ冷や汗をぬぐいながら弁明した。
「まままま待ってくれよ。嘘なんて言ってない。そう思うならこのロボットに聞いてみろよ!それにふざけているのは君の方だ。何でいきなり撃つ!?それに銃刀法違反だろ!!」
少女は一向に銃を降ろさない。
なんならセーフティーロックを外したであろう重みのある音が聞こえてきた。
「あんたが嘘を言ってないからふざけないでって言ってるの!」
「はぁ!?全く意味が…」
「東京生まれ東京育ちなんてありえないのよ!だって東京は200年前に滅んだ旧日本の首都なんだから!!」
……は?
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