第1章  第2節 『未来世界』

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それにしても、消したと言うことはやはり人為的に関東地方は消されたのか。 それも国家レベルの力が動いて。 となると関東地方に住んでいた人々はどうなったのだろうか。 首都は?そもそも関東地方を消してしまっては経済的な被害は甚大なはず。 日本は今国として成り立っているのか? 頭の中に多くの疑問が浮かぶ。 だが、僕はどうせ半年で死んでいた命だ。本来であればこの凄惨な未来を体験することはなかったし、生憎心配する子孫もいない。 つまり、僕にはこの世界のことなんてとんと無関係で、無関心を貫いても誰にも咎められることはない存在なのだ。 未だ地図を見つめる少女を見て思う。 面倒なことに巻き込まれてしまっているような気がする。 そんな倦怠感が徐々に身体を蝕んでいった時だった。 「日本は感染を防ぐため、関東地方を覆うように黒球(こっきゅう)と言うテクノロジーを使ったの。もともと黒球は、日本が外敵からの攻撃を防ぐための手段として秘密裏に開発していたものらしいんだけどね。皮肉なことに国民を守るための盾は、国民を隔離するための檻として使われたのよ」 「それじゃあ関東地方に住んでいた人たちって…」 「この150年間、黒球が開いたことはないわ。あなたの想像している通り。関東地方に住んでいた約4千万の人々は閉じ込められたのよ。なんの告知もなく、ただ関東地方に住んでいたと言うだけで!!」 言葉尻からアイリスの怒気が伝わる。 「そんな馬鹿な…。4千万人を閉じ込めただって?日本の人口の約3割もの人間を閉じ込めたって言うのか!?無茶苦茶だよそんなの!そんな恐ろしいウィルスが蔓延している空間に、150年間も閉じ込めたままなんて生存者なんていないんじゃないのか」 「…生存者は居るわ」 「なんでそんな事が解る。あぁそうかいくら黒球とやらの中でも電波は通じるのか。それで外と中で連絡をとったのか」 アイリスが首を横に振る。 「じゃあなんで…」 一瞬の沈黙の後、アイリスが消えた関東地方を指差して言った。 「私がその生き残りだからよ」
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