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第一章 「生徒会長様」
「不良の樟山(くぬぎやま)くんも、補習にはちゃんと出る。少しびっくりです」
空は夕焼け色に染まって、校庭は静まっている。あまりに寒い今日は、12月28日に当たる。
「会長様も補習ですか」
ゆっくりドアを閉めると、生徒会長様はこっちを向いた。後ろの棚に背中を預けて、見慣れた少し癪に障るような見上げた顔をする。
「いいえ、私は授業に出ているもの。なんで、あなたは賢いのに授業に出ないの」
「賢いからといって、勉強するのは義務ではないですから」
そもそも、賢くもない。賢くて真面目なやつは、冬休みの補習になんて来たりしないだろう。
「……羨ましいわ」
ため息をつくと、会長様は俺のほうに近づいてきた。ピンと張った背筋は、隙のない彼女らしい。
「何が、ですが。俺が勉強しないってことですか?」
「いいえ、違うわ」
「まぁ、会長様は忙しそうですからね」
会長様は、とても忙しそうだ。
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