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学年が違うからあまり知らないけれど、学校外でも補導なんかをしているのだから忙しいに決まっている。何度、俺はこの会長様に補導されたことか。学校を出ても、タバコを注意してくるなんてめんどうくさい。今度、見つけたら先生に突き出すと、脅しをかけられたりもするのだから本当に。
「なんで、今回は補習に呼ばれたの」
「テストの点」
会長様が、驚いた顔をする。
「へぇ、珍しい」
「こんなもん暗記するほど俺は暇じゃないんで」
「樟山くんはやっぱり問題児ね、授業に出ればわかるでしょうに」
「単位落とさないギリギリでは出てます」
そもそも、いつもはこんな補習に呼び出されるなんてヘマはやらない。
「私ね、社会の先生になりたいの」
会長様は恋をする女の人のような顔をしてそう言った。
「だからとはいえ、俺に今から世話を焼くのはやめてくださいね」
「そう?」
「教科書を見れば、答えが載ってます」
そう言って教科書をつつくと、どれどれといったふうに彼女は長い横髪を耳にかけた。答えが載っている、という言い方が納得言っていないのかこの人はやっぱり俺に世話を焼く気のようだ。
「信長は、自害っていうけれど。あれはこの時代の人たちにとってさ」
彼女は、目を伏せる。
「殺されたようなものよねぇ」
織田信長が登場するページでもないのに、何故そんな話をするのだろう。
「どうしてですか、一応は自分で命を絶った。そうでしょう」
「あなたは、想像力はあるのにそれをしないタイプ?それとも、えっとわからないの」
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