第一章 「生徒会長様」

6/25
前へ
/48ページ
次へ
 大晦日の前日の夜11時まで俺は所謂、不良仲間たちと遊んだ。家路につくと、急に訪れた静寂に包まれる。いつもは日を跨ぐほど騒ぐのに、年の瀬だからかそれとも寒いからか、気づいたら解散の流れになっていた。 「家に帰るの、クソほど億劫」  そう言ってため息をつくと、後ろから声が返ってきた。 「語彙力があるのか、ないのかはっきりしない文ね」  この時間にはもうベッドに入っていそうな、夜に似つかわしくない女だった。 「また補導ですか、今日タバコ持ってないですよ」 「いいえ、補導じゃないわ」 「っていうか、会長様なのにこんな時間に出歩いていいんですか」  彼女が生徒会長じゃなくても、女子高校生が出歩いていい時間ではない。 「秀才樟山くんこそ、補習明けくらい勉強したら?どうせ遊び帰りでしょ」 「秀才?何、世迷言を」 「世迷言って使ってみたかった?」 「……」 「今日くらい、いいじゃない。悪いことしたって」 「生徒会長様に悪いことなんて似合いませんって、仕方もわかんないでしょ」 「クソほど秀才な樟山に教えてもらうわ」 「……汚い言葉の使い方もいります?」 「馬鹿にしないで」  怒った顔はなんだかいつもより女っぽかった。     
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加