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もっとも、パーティの全員がその話を信じたと言う事は無かった。
“大賢者”メルル=マーキンス、“森のハイエルフ”デルフィトス=シェキーナ、“剣匠”カナン=ガルバは、聖霊の言葉を鵜呑みにする事無くエルスを追い、合流したエルスと行動する様になったのだった。
それは取りも直さず、勇者パーティを二分した争いになる事を示唆していた。
人界、魔界は勿論の事、この世界で確認されている「四界」で最も強い力を持つ彼等が、正面切って争うのだ。
その戦いは正しく、国家間の戦争にも匹敵する規模で展開される筈……であった。
だが予想を反し、エルスは終始「逃げ」に徹していた。
時にはエルスの意思で、あるいは状況に流されるまま……若しくは選択の余地が用意されていない場合もあった。
徹底的にアルナ達からの追撃を逸らし只管に時間を稼いだ結果、漸くエルスの持つ「魔王の卵」が孵化したのだった。
もっとも、それでお役御免と言う訳にはいかず、結局エルスは魔王を育てる事となったのだが。
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