実話怪談 白いふわふわのお姉さん

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 その小道に幽霊がでると、僕に最初に言ったのは後に暴走族のリーダーになる二つ年上のガキ大将的な男の子でした。  そのころは彼も小学生、今三十六の僕が小学校の低学年くらいだったので二十五年以上前の話になるのでしょうか?  今でもその時のことはよく覚えています。  そのガキ大将がリーダーを務めた暴走族というのも、都会の暴走族みたいな集団危険行為を繰り返すような、質の悪いものじゃなく、若いエネルギーをバイクで発散するような、十人くらいのささやかな集まりでした。  しかしそんな集まりのリーダーを務めるだけあって、ヤクザ相手でもつっかっかっていくような肝の据わった男の子でしたが、その幽霊に対してだけはまるで女の子のように怖がるんで、仲間が不思議に思うほどでした。  その小道は高原ウォーキングコースなんて呼ばれる、綺麗なハイキングコースから一本だけ脇に入った、手入れもあまりされていない雑木林の中にあって、かつてそこでは本当に自殺者がいたそうなのです。寂しい場所です。  男の子の家はその小道の近くのやっぱり雑木林の中にあって、家の窓からはその小道が見えるところにありました。  それは夜分のだいぶ遅い時間だったといいます。その小道に女の人が歩いていたそうです。白いワンピース姿の様な。  こんな林の中をこんな時間に人が歩いているんて珍しいね、と隣の姉に言って、姉と一緒にもう一度窓を見たときでした。  百メートルくらい離れていた女がすぐ目の前に来ていて窓からこちらを覗いていたんだそうです。青白い相貌にくり抜かれた虚空の様な黒い目が忘れられないんだと僕に言いました。  その場でパニックになった姉弟は急いで自室まで逃げて、その晩は恐怖で震えたそうです。
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