実話怪談 白いふわふわのお姉さん

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 当時の僕はその話を話半分にしか聞いていませんでした。だからその小道を特に怖がったりもしませんでした。  友達の家に行くときも、その道が一番の近道だったのでよく通っていましたし、薄暗い陰気な道でしたが林の中の道なんて、僕が住む安曇野にはいくつもあって、いちいち怖がっていられませんでしたからね。  そこは植林した松が多いんですが、所々にクヌギやヌルデなんかが生えていて、木が日を遮っていていつもうす暗いところでした。  当時小学校低学年の僕には六歳年下の弟がいて、その時は二歳くらいだったと思います。家は商売をやっていて両親が忙しく、弟の面倒を見るのは主に僕の役目でした。  その小道のすぐ近くに、かつて地元の特産の産業だった蚕の一種天蚕の歴史や製品なんかを展示した、箱物の文化センターがあって、僕は社会見学でそこへ行きました。  本格的な美術館や博物館に比べれば大したことはなかったんですが、カラフルな写真や着物があって、見ていて面白い場所でした。  そこは家から徒歩でもすぐに行ける場所にあり、弟をそこへ連れて行ってやろうと思ったんです。なんせ無料なんで子供でも行ける場所でしたからね。  初夏の比較的過ごしやすい時期の話だったと思います。雨が少なくてその日も晴れていたように記憶しています。  今では百キロを超える巨漢になっている弟も、当時はものすごく小さかったです。  緑色の車体に黄色いハンドルのプラスチックの玩具の車に乗せて、紐をくくって僕が楽々引っ張れるくらいには小さかったんです。  その日は弟の玩具の車を引っ張って、例の小道を通って天蚕の資料館に行きました。蚕の写真や綺麗な着物なんかを弟は喜んで見て、僕もうまくいったと思いました。  行きはよかったんです。問題は帰り道で起こりました。やっぱり怪異って帰り道なんでしょうかね?
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