プロローグ:ストロベリー・アタック

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プロローグ:ストロベリー・アタック

頭の痛みで目が覚めた。 後頭部がズキズキやたら熱い。 頬に微かに風を感じると、反射的に俺はまぶたを開けた。 露出が合わずホワイトアウトした視界。 徐々に露出が調整されると、最初に空が見えた。 雲はなく、真っ青すぎて何だか底が知れない空。 どうやら、いつの間にか外で眠ってしまったようだ。 ゆっくり視界を下へ動かす。 次に見えたのは、なぜか『いちご』だった。 正しくは、いちごの絵だ。 さらに正確さを期すなら、それはきっと制服のスカートの中の ごく面積の小さなあの布…にプリントされたいちごだと思われた……。 「……いちご?」 すべてが幻のような不思議な感覚の中、その言葉は口から自然とこぼれた。 次の瞬間、女の子の短い悲鳴が聞こえたかと思うと、見上げる俺の顔面に 何か黒いものが思いっきり振り下ろされた! 「イッデッ!」 思わず声が漏れ、あまりの痛さに涙まで出た。 次に視界が捉えたのは、太陽を背にこちらを見下ろす制服の少女だった。 もとい、“超絶”美少女だった。 あまりの美しさに、痛みすら一瞬忘れるほどの……。 陽光にきらめくショートの黒髪。 透き通るように白い肌。 潤いをおび黒目が大きく、圧倒的に印象的な双眸。 顔は小さく、腕はか細く、だが出るとこは出ていたりもする。 太陽を背にした彼女は、その存在自体がすでに神々しく、 さながら、天から降臨した女神のようにも思えた。 それは、本当に一瞬の出来事だったはずだが、 永遠に続くスローモーションのようにも感じられた。 圧倒された俺は、思わず心の中のシャッターを切った。 自分史上、最強の美少女を記憶に焼き付けるために。 しかし、次の瞬間、なんの前触れもなく俺の視界と意識は、 コンセントを無理やり抜かれたテレビのように暴力的に途切れ、 まさに文字通り"ブラックアウト"した。
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