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流石は勇者候補か、振動がここまで伝わるとボクはとっさに立ち上がった。
「そうよそうよ! 1番努力して精一杯がんばってみせたのはトレスのおかげよ? せっかく報われた人のパーティ台無しにすることが、アンタに出来るのかしら?」
後ずさるボクを面白おかしそうにジト目で見つめ、周りに同調しながらカレンちゃんはボクに言葉を突き刺し、そばにいたアリシアが無言で頷きながら同感。
胸から腹元までが孕まれたかのように痛くなった。
涙を決して流してはいけないと鼻をすすりながら、ボクは言葉を選んだ。
「ボクは、本当にもう……皆さんから必要とされない存在なんですか?」
「キミを必要としたことなど、今まで一度もない。これまでも、これからもだ」
枯れてきた声をグラスに注がれた水で潤わせ、口を拭ってからトレスさんは続けた。
「正直、他とは比べられぬ程の幸運を持ったキミを最初は期待していたさ。けど裏切られたのはキミじゃない! 俺たちだ!! 夜な夜な後悔したさ! キミをパーティに入れてしまった愚かな自分を!! 他の仲間たちに迷惑をかけてしまった行いを! キミという存在を!!」
いつの間にか彼は、ボクの方まで距離を詰めて拳を握って叩きつけていた。
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