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巨大な針に刺されたかのような激痛が口の中を走り、ボクは酒場の外まで吹っ飛ばされていた。
視界がボヤけて、鉄の味がする。
済ませた耳に聞こえるのは、喜びを上げ「やれやれ!」と観戦するパーティメンバーたち。
気がつけば駆け寄ってきたトレスさんに襟を掴まれ強引に立たされ、サクマさんにアイコンタクトを取ると彼はボクの装備を外し始めた。
抵抗できるような状態ではないボクは重装備を外され、大通りにむかって無造作にトレスさんに放り投げられる。
「ぐはっ!」
人が通り抜けていく。
ボクに気がついても声を掛けようとする者など1人も居なかった。
「キミ……いやネロ・ダンタ! お前とはこれっきりだ!! 2度と俺らの前に姿をみせたりするな! もしまた俺らの前に現れることがあったら殺してやるからなっ」
怒りとともに殺気が混じっていた。
言い返せる言葉が思いつかない。
握りしめた拳の隙間から血がポタポタと垂れ、噛んだ唇から熱く鉄臭い液体が流れるだけで何もない。
笑う彼等を睨みつけようとしたが、ボクはは彼等に背中を向けたまま酒場から走って逃げた。
後ろから奴らの醜い笑い声が聞こえてくる。
ボクはできるだけ彼等の声を聞かないよう耳を塞いだ。
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