1人が本棚に入れています
本棚に追加
母の泣き笑いのような、さびしい笑顔を思い出す。
「気分転換になると思うの。日本の学校にはいつか行って欲しいと思っていたし。真悠ちゃんのためには、今行くのがいいと思うのよ」と、母は気まずそうに言って、「とてもいい学校なのよ。個性的な子がいっぱいいるから、きっと真悠ちゃんもお友達がいっぱいできるんじゃないかしら」とテーブルの上にパンフレットを広げた。
私がそれを手に取りもせず、無言でいると慌てたように「それにね、パパの母校でもあるのよね」、すぐ横にいる父の顔を不安げにのぞきこむ。
父はにっこりとほほ笑んだ。いかにも安らぎに満ちて、どっしりとゆるぎのない雰囲気。
多くの人を率いるのにふさわしい。
私だってちょっと前までは、その父に憧れて、いつか父と一緒に仕事をすることが夢だった。
「そうだよ、真悠子。パパは、あの学校に通ったから今があると思っている。それに一生の友達もたくさんできた。麹町の佐介おじさんとか、小さい頃はよく遊んでもらっていただろう。ほら、よく日本のプレゼントを送ってくれる・・・・・・」
「もう忘れているけど」。
最初のコメントを投稿しよう!