お坊ちゃまは18代目

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母の泣き笑いのような、さびしい笑顔を思い出す。 「気分転換になると思うの。日本の学校にはいつか行って欲しいと思っていたし。真悠ちゃんのためには、今行くのがいいと思うのよ」と、母は気まずそうに言って、「とてもいい学校なのよ。個性的な子がいっぱいいるから、きっと真悠ちゃんもお友達がいっぱいできるんじゃないかしら」とテーブルの上にパンフレットを広げた。 私がそれを手に取りもせず、無言でいると慌てたように「それにね、パパの母校でもあるのよね」、すぐ横にいる父の顔を不安げにのぞきこむ。 父はにっこりとほほ笑んだ。いかにも安らぎに満ちて、どっしりとゆるぎのない雰囲気。 多くの人を率いるのにふさわしい。 私だってちょっと前までは、その父に憧れて、いつか父と一緒に仕事をすることが夢だった。 「そうだよ、真悠子。パパは、あの学校に通ったから今があると思っている。それに一生の友達もたくさんできた。麹町の佐介おじさんとか、小さい頃はよく遊んでもらっていただろう。ほら、よく日本のプレゼントを送ってくれる・・・・・・」 「もう忘れているけど」。     
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