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記憶はおぼろげだ。麹町のお宅に、まだ小さな頃に遊びに行った、と微笑ましいエピソードのようによく言われたけれど、ほとんど覚えていない。
「とにかく、のんびりと日本で将来のことを考えてみてもいいんじゃないか?」。
まるで将来をリセットされたような、その言葉。
まぁ、実際そうだったんだけれど。
リセット。ぜんぶ一から始まり。
ゲームオーバー。
心の中でつぶやいて、食べ終わった紙屑をぐしゃっと丸めて、芝生の上に置いておいた。
そのまま、アイフォンのイヤホンを、耳に突っ込んで、ごろりと寝転がった。
今までまったく興味のなかった、日本の流行りの歌や、ロックばっかりをセレクトしている。
目をつぶって、なんとなく聞いていると、にわかに周りに人の気配がした。
イヤホンごしでも、きゃーきゃー騒いでいる声が耳に入る。
しかも5、6人はいそうな・・・・・・。
何? 何なの?
体を起こした瞬間、目の前にこちらに向かって走ってくる男子生徒が目に入った。
すごいスピード。しかも、相手も私がここにいることに気づいていなかったみたいだ。
あきらかにお互いにびっくりして、身が固まる。
ぶつかる!
目をつぶって身を縮めた瞬間、ふっと風が頬を切った。
勢いよく、高く巻き上がるような嵐。
私の頭の上を、そのまま飛び越えていく。
「悪い! ほんとごめん!」
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