お坊ちゃまは18代目

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記憶はおぼろげだ。麹町のお宅に、まだ小さな頃に遊びに行った、と微笑ましいエピソードのようによく言われたけれど、ほとんど覚えていない。 「とにかく、のんびりと日本で将来のことを考えてみてもいいんじゃないか?」。 まるで将来をリセットされたような、その言葉。 まぁ、実際そうだったんだけれど。 リセット。ぜんぶ一から始まり。 ゲームオーバー。 心の中でつぶやいて、食べ終わった紙屑をぐしゃっと丸めて、芝生の上に置いておいた。 そのまま、アイフォンのイヤホンを、耳に突っ込んで、ごろりと寝転がった。 今までまったく興味のなかった、日本の流行りの歌や、ロックばっかりをセレクトしている。 目をつぶって、なんとなく聞いていると、にわかに周りに人の気配がした。 イヤホンごしでも、きゃーきゃー騒いでいる声が耳に入る。 しかも5、6人はいそうな・・・・・・。 何? 何なの? 体を起こした瞬間、目の前にこちらに向かって走ってくる男子生徒が目に入った。 すごいスピード。しかも、相手も私がここにいることに気づいていなかったみたいだ。 あきらかにお互いにびっくりして、身が固まる。 ぶつかる! 目をつぶって身を縮めた瞬間、ふっと風が頬を切った。 勢いよく、高く巻き上がるような嵐。 私の頭の上を、そのまま飛び越えていく。 「悪い! ほんとごめん!」     
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