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ウソ告だった。なにも始まらないはずだった
「鴇田くんと付き合うための条件があるの」
放課後、公園に呼び出して「おれと付き合ってください」と申し入れたときの返答はイエスかノーだけだと思っていたおれにとって、原川 碧さんの返答は斜め上をいっていた。
「条件……はい、なんでしょう」
ふられることを前提として傷ついてない表情を練習していたおれは、彼女が口にする条件をどんな顔で聞けばいいかわからなかった。
「うん、これから説明するね。とりあえず座ろう?」
ペンキの落ちたベンチを指し示す。どっちが先に体重をかけるか、その間合いを慎重にはかりながら軽く腰かけた。制服のスカートの乱れを直す碧さん。肩口まで伸びた髪がさらさらと揺れていい匂いがする。
「……ふぅ」
小さな肩がおおげさなほど上がってすとんと落ちる。そんなふうに深呼吸されるとこっちまで緊張してしまう。
「まず訊きたいんだけど、鴇田くんは去年から同じクラスだったよね。でもほとんど話をしたことがないよね。それなのにどうして告白してくれたの?」
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