ウソ告だった。なにも始まらないはずだった

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 とターンした指先を思わず掴んだ。 「いいって」  勢いよく走り出そうとしたところへ力いっぱい引いたもんだから、急ブレーキがかかった碧さんの体がおおきく跳ね上がる。  はっとして振り返った碧さんと目が合う。その瞳があんまりキレイに見えたから思わず手を離してしまった。碧さんはよろめきながらも体勢を立て直す。 「ごめん……思わず」  いまになって恥ずかしくなってきた。  碧さんに触れた指先が焼けただれたみたいに熱くなってくる。 「ううん」  碧さんはおれが触れた指先をもう片手で包んで立ち尽くしている。 「……手、つないじゃったね」 「うん。つないだ」 「これで今日のアクションはクリアだね」 「うん」  彼女の口ぶりからすると、アクションを完了した時点で解散というわけだ。 「え、と。ガチャは一日一回だけなんだっけ」  なんだか離れがたい。 「うん。特にアプリに制限がされているわけじゃないけどね。お望みなら、わたしにお金払って課金すればもう一回まわしてもいいよ」 「本気で?」 「冗談だよ」  おどけて舌を出す。こんな顔クラスでは見たことない。 「ガチャは一日一回だけど、達成したアクションは一回だけ変えることができるよ。マンネリ化しないように」     
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