ウソ告だった。なにも始まらないはずだった

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「おれはべつにこのままでも――あ、いや、でも」  おれとしては明日も『手をつなぐ』が出てもいいけど。 「ちょっと考える」 「うん。十二時間以内なら変更できるから、ゆっくり考えてみて。それじゃあ」  碧さんは左手をさすりながらそそくさと帰っていく。  おれは自分のスマホを取り出してアプリを起動した。『手をつなぐ』の項目が点滅して修正可となっている。 「……よし、これで完了」  スマホをポケットにしまいこみ、鼻歌を口ずさみながら帰路に就いた。  まだ指先が熱い。こんな熱さは初めてだ。  本当はもっともっと触れていたかった。  だから。  『手をつないだまま一時間お喋りする』に修正した。
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