ガチャしたりメールしたり驚かせあったり

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ガチャしたりメールしたり驚かせあったり

「おはよう、鴇田くん」  翌朝、学校の玄関で碧さんから話しかけられたときは幻聴かと思った。未だかつて挨拶したことなんて一度もない。 「あれ、ガチャ回してないよね?」  小声で問いかけると碧さんは笑顔で頷く。 「驚かせてごめんね。でも、同じクラスだから挨拶をするくらいは普通だと思って」  たしかにあのガチャは「恋人」としてのアクションを決めるものであって、同級生の行動を制限するものじゃない。考えてみれば当然のことだ。だけどこれまではその挨拶ですらまともにしたことがなかったわけで。 「大丈夫、クラスで目立つようなことはしないから。わたしなんかに話しかけられたら鴇田くんが迷惑だもんね」  碧さんは慌ただしく立ち去っていく。入れ違いに賑やかな声の集団が現れた。 「おはよぅ晴臣。どうしたの、ぼーっとして」  幼なじみの莉奈が無遠慮に顔を覗きこんできた。髪と同じ茶色に染めた眉が面白がるように吊り上がる。 「べつに」  香水だかなんだか知らないけど、匂いがきつい。  だから逃げるように上履きを床に放り、爪先を引っかけて歩き出した。     
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