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嘘をついた。お試し期間中でガチャを回しているなんて意地でも言いたくない。
「やっぱりねー、お気の毒さまぁ」
莉奈はぱんぱんと手を叩いてやかましいくらい笑っている。
「そんなに落ち込まないでぇ。ストレス解消にさ、今日カラオケ行こうよ。授業なんかサボってオールで歌っちゃおうよ。どうせ四月の授業なんて大した内容じゃないんだから」
「やだよ。どうせ莉奈の歌ばっかり聞かされるんだ」
それに放課後は二回目のガチャを回すのだ。カラオケなんかに付き合っている暇はない。
「えー、めっちゃ上手くなったんだよ。最新曲もマスターしたんだよ」
莉奈がしつこく追いすがってくる。
「ねー行こうよ。割引券もらったんだよー」
割引券。その言葉を聞いて立ち止まった。
「……どうしたの?」
怪訝そうな莉奈の鼻先に手を出す。
「割引券、あるんだろ。くれよ」
「え、いいけど?」
とカラオケ店の割引券を数枚取り出して握らせてくれる。
「サンキュ」
碧さんだったらなにを歌うかな。そもそもカラオケに行ったことあるのかな。そんなことを考えながら先を急いだ。
「え、ちょっと。意味わかんない。あたしと行くんじゃないの? 晴臣ってばーッ」
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