ウソ告だった。なにも始まらないはずだった

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 そう言ってコートのポケットからスマホを出してきた。おおきな水玉がいっぱい描かれた手帳型のスマホだ。画面を軽く操作したあとこちらに向けてくる。 「アプリ?」 「そう。付き合いはじめた恋人同士がなにしていいかわからないときに使うんだって。最大で三十個、任意の内容と排出率(レアリティ)を決めて一日一回だけ回してその日のアクション(行動)を決めるの」 「……それで?」  本音を言えば問答無用でふられると思っていた。クラスが同じというだけでほとんど話したこともないし、アイツはウソ告で戸惑うおれや碧さんをからかいたいだけだから既に目的は達している。  だけど碧さんは『付き合うための条件』を提示してきた。それはつまり付き合ってもいい、ということだろうか。 「わたし、だれかと付き合うのは初めてなの。鴇田くんのことは嫌いじゃないけど、付き合うのとはなんとなく違う気がする。だからお試し期間が欲しいの。いまから三ヶ月の七月七日まで毎日このガチャを回してやるべきことを決めていきたいと思うの。それが条件」  付き合うための条件と言うにはあまりにも運任せだと思った。 「……ひとついいかな」  ぐっと身を乗り出すと碧さんは驚いたように体を引きつつ、やっとおれの目を見てくれた。 「きょうは四月六日だから、一日多いと思うんだけど」     
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