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「ありがとう、ここまででいいよ」
碧さんの家はここから三駅の先だ。
「もし良ければ家まで送っていってもいいかな?」
碧さんの片眉が軽く上がる。困ったように瞳が揺れたあと、
「ごめんなさい、家までは来ないで」
と頭を下げられた。
だからと言ってハイそうですかと見送りたくはない。
「わかった、諦めるよ。だけど少しだけ話して行かないか? ほら、今朝のガチャで三十分話すって書いてあったし」
我ながらよくぞ三十分話すと条件をつけたものだと感心する。ガチャに誠実な碧さんは断れない。
「うん……じゃあ三十分だけね」
碧さんはベンチの端っこに腰を下ろす。おれも適度な距離を探りながらベンチの真ん中あたりに座った。互いの間にカバン二つ置けるくらいの間隔。それがいまのおれと碧さんとの心理的な距離だ。
碧さんは自ら話題を切り出すことなくおれの言葉をじっと待っている。
「昨日、押しかけて迷惑だったかな」
「嬉しかったよ。でも――」
初めて告白したあのときと同じように、碧さんは熱心に爪先を眺めている。長すぎる沈黙を、おれは辛抱強く待った。
三分が経った。
「あのアパートは叔父さんの家なの。夜勤で寝ていることが多いから騒がしくすると起こしちゃうし」
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