ウソ告だった。なにも始まらないはずだった

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 ※ 「昨日はありがとう。じゃあ、鴇田くん回してみて」  翌日の放課後。公園で落ち合った碧さんは早速自身のスマホを取りしておれに差し出してきた。 「え? 自分のスマホで回すんじゃなくて?」 「お互いのスマホをアプリでリンクしてあるからどっちでも結果は見られるけど、一緒に見たほうが楽しいでしょう?」  にこにこ顔でおれの手の中にスマホをすべり込ませてくる。 「わかった。回すよ」  おれは起爆スイッチでも押すような心境で指を伸ばした。ハート形に『さぁ、(こい))』と書かれたなんともいやらしいボタンのせいで気持ちを煽られているような気がしてくる。  碧さんもおれの指先を真剣に見つめている。  排出率から言えば『電話』や『メール』がかなりの高確率で出現するはずだけど、時々とんでもないレアが飛び出すのがガチャだ。それに碧さんがなにをどんな排出率に設定しているのかわからない以上、確率なんて考えても無意味だ。  ぽち。  指紋を押しつけるようにぐい、とボタンを押した。ボタンが軽く凹んだあとキラキラと点滅する。  ――さぁ、恋。  ピロリーン。と盛大な効果音とともに現れたのは。 『手をつなぐ』  ウソだろぉおおおお。     
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