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「おねえちゃん……?」
杏ちゃんが、目に涙をためてあたしを見あげてくる。
だって……ハグには、ずっと苦しめられた。
ヨウちゃんだって、たくさんたくさん傷つけられた。
鵤さんも誠もヨウちゃんのお母さんもお父さんも、妖精たちまで巻き込まれた。
――今まで、おまえたちにしてきたことはあやまろう――
老婆の声がすすり泣いた。
――わたしはずっと、自分の体がほしかった。白い妖精として生まれるはずだったわたしは、黒いタマゴにかえられて、さらに孵化する前にタマゴを割られて、実体を失った。そのせいで、わたしはわたしを手に入れることができなかった。
「自分がほしい」「自分がほしい」。わたしは、おまえやあの少年に助けを求めた――
「た、助けを求めたっ!? さんざん、嫌がらせしたくせにっ!」
――ほかの求め方を知らなかったのだ。老婆の姿をしていようと、わたしはしょせん生まれたての妖精。未熟さゆえ、自分の心の悲鳴を、人にうまく伝えるすべを、知らなかった。許してくれ――
……許す……?
あたしが……ハグを……?
「それで……あたしにどうしろって、言うの……?」
ゴロロロロと雷鳴がとどろいた。
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