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頭上の葉をかきわけると、上にのった雨粒がパラパラと落ちた。
雨雲が切れて、青空がのぞいている。その下に、かまぼこ型やホームベース型をした墓石が、いくつもたたずんでいる。
つっと、空から、トンボの羽をつけた小さな生き物がおりてきた。銀色の羽から、銀色のりんぷんがチラチラと舞う。
「……チチか?」
オレが手のひらをさしだすと、チチはその手の上におりたった。
見慣れたとはいえ、奇妙な生き物だ。手のひらサイズの身長。なのにちゃんと、十二歳ほどの少女の姿をしている。バレリーナのような白いドレス。ツツジの雌しべのように細い手足。青い瞳。金髪を丸めてひとつにまとめ、綿毛の髪飾りでとめている。
「チチチチチチチ」
チチは口を動かして、オレに向かって、いっしょうけんめいに妖精語を話している。
「どうした? なにかあったのか?」
綾のケータイがつながらない。
ハロウィンのイベント中の小学生たち一行は、無事に植物園についた。だけど、綾と「杏ちゃん」という小一の女の子がもどってこない。
「キンキンキンキン」
オレの肩に、もうひとりの妖精がおりてきた。
歳のころは綾と同じか、少し幼いくらいか。白いレースのロングドレスを身にまとい、ウエーブがかった長い金髪を風にゆらしている。
「ヒメ」
ふたりの妖精は、羽をはばたかせて、ふたたび舞いあがった。
オレをふり返り、ふり返り、雨あがりの空を飛んでいく。
「ついてこいって、言うのか?」
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