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「コーナーを走るときは、トラックのギリギリ内側をねらうんだ。視線は落とすな。コーナーの先にある直線コースを見ろ」  ヨウちゃんのアドバイスがどんどん細かくなってきた。 「短距離のときは、足を地面にベタっとつけて走るんじゃないんだよ。体を前のめりにして、足の親指のつけねだけ、地面につける感じ」  む、むずかしい~……。  リレーでは、あたしが第五走者で、ヨウちゃんはアンカーを走ることに決まった。  決まってからは、バトンパスの練習はもっぱら、ヨウちゃんと。  でも、うまくいかなくて、成功するのは十回に一回。 「綾、パスするとき、オレのどこ見て走ってる?」 「え? 足元かな? 右左、右左って、足の出ていくタイミング」 「それで、左足が出てから、左手がのびると思って、そのあとで行動にうつすからタイミングがずれるんだよ。なんていうか、テンポは体でつかむんだ」 「って、言われたって~……」 「綾ちゃんって、バトンパスのときだけ、ガチガチになっちゃうんだよね~。苦手意識強いから、よけい意識しちゃって、それで、体が動かなくなっちゃってるの。どうしたら、いいんだろね~」  有香ちゃんも真央ちゃんも、考え込んでる。  休み時間の特訓が終わったら、放課後は部活で、自主制作のパッチワークの直し。家に帰ったら、塾行ったり宿題したり。寝る前は、手芸部のノルマのコースターとしおりづくり。  で、朝六時に、高台の坂まで行って、朝練。  は、ハード……。 「ゴールっ!」  高台の坂をかけのぼったら、ジャージ姿のヨウちゃんが笑っていた。
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