彼女はネクロフィリア

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夏休みに入って菊嶋さんの家へと招かれた時には飛び上がるほどに驚いた。嬉しかった。菊嶋さんの部屋は想像していた女の子ぽさはなく無機質な印象を受けたが、甘ったるい部屋を想像していた僕にとっては好感の持てる部屋だった。それにとても綺麗に掃除されている。自分の部屋を思いだしてあの状態では菊嶋さんを部屋に呼べないので掃除を徹底しようと心に決めた。部屋をざっと見た数秒で彼女が胸に飛び込んできた。嬉しいとか、大胆だとか、そういう気持ちが湧き上がるはずの行動なのに、たったひとつのもので台無しになっていた。彼女の両手に握られた、刃渡り17cmの包丁。一般家庭の何処にでもあるそれで僕の心臓を一突きしていた。 「わたしのために死んで」 この後に及んでも笑顔の菊嶋さんはかわいいな。なんて僕は場違いなことを思った。 これが顛末。あっけなく、簡単に、僕は死んだ。
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