6人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな夜中に暗く長い道を、こんな小さな女の子を歩かせるのを不憫に思ったので
「じゃあ次の町に出るまで」と二人を車に乗せる事にしました。
トランクを開けてキャリーケースを積み、父親が助手席に座ると、娘さんはその膝の上に乗りました。
ちょこんと座るのかなと思ったら、胸にギュッと抱き着いて、父親の顔をジーッと見詰めているんです。
私は横目でチラチラと、可愛い子だな~こんな子が産まれてくれると良いな~と微笑ましく思いながら運転していました。
すると父親が突然こう言ってきたんです。
「何かここら辺の事件の事、言っていましたか?」
え?何が?と思ったんですけど、すぐにカーラジオのニュースの事だと気付きました。
「あ、つけとくだけで聞き流していたので。何か気になるニュースありました?」
「いえ、特に。何か気にしている様だったので」
父親は目を逸らすように前を向きました。
「あ、もしかして車で事故にあったんですか?それでこんな何も無い道を歩いていたんですか?」
「いえ、最初から車には乗っていませんでした」
まっすぐ前を向いたままこちらを向こうともしません。
……何か違和感あるなーと思ったんです。
最初のコメントを投稿しよう!