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いやもちろん今の会話も、こんな何も無い暗くて長い道を小さな子供を連れて歩いているのもおかしいんですけど、もっとこう、根本的な何か。
ピリリリリ。
その時、携帯電話の着信音が鳴りました。
本当はいけないんですけど、運転しながらチェックすると、妻からのメールでした。
『色々終わって今から寝るよ。帰りに通る付近で連続殺人犯が逃走中ってニュースで言ってた。気を付けてね。おやすみ』
車の中に居るのに何に気を付けろと言うんだとクスリとした瞬間、ハッとしました。
さっき父親が何故ニュースを気にしていたのか、それが分かったんです。
知っていればそのまま通り過ぎる事も出来たのに、知らない私はわざわざ止まって、そして乗せてしまった。
連続殺人犯かもしれない男を。
「何かありましたか?」
父親が携帯電話を覗き込む様に私に訪ねて来ます。
「いえ、妻からです。もう寝るから気を付けて帰ってねと」
急いで携帯電話の画面を隠して答えました。
「気を付ける?何に?」
「あの、あの……運転にです」
連続殺人犯に。と言えるわけがありません。
「そうですか。なら携帯電話をいじりながらでは危ないですよね」
もう携帯電話は弄れません。連絡の手段は封じられました。
「ですよね」
携帯電話を置いて返事をした時、娘さんと目が合いました。
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