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そう思ったのも束の間、その明かりが小さ過ぎる事に気付きました。
それは道の途中にポツリと建ったガソリンスタンド。降りて貰うには無理があります。
だって私はそのまま町の方へ向かうのですから、何故わざわざ止まってポツリと孤立したガソリンスタンドに二人を降ろさなければならないのか。その理由が思い付きません。
殺人犯かもしれないから降りてくれ、なんて言えるはずがありません。
嫌な気配がして助手席を見ると、父親が食い入る様な目で私を監視していました。
何もするな。そのまま通り過ぎろと警告する様に。
下手に動いたら私は……。刻一刻とガソリンスタンドは近づき、通り過ぎようとしています。
このまま行くともう入れない、と思った時、トランクからガタリ、と音がしました。
ハンドルを切ったわけでも道路に段差があったわけでもない。
トランクの中のキャリーケースが勝手に動いた様に音を立てたのです。
父親の視線が私から後方へ移り、私はどういうわけか突然閃きました。
「実はさっきからお腹が痛かったんです、もう我慢できない。そこでトイレに寄っても良いですか!」
返事を待たずに急ターン。急ブレーキで止まるやいなや外へ飛び出しガソリンスタンドの事務所に走りました。
「いらっしゃいませー」
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