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父娘(おやこ)
父娘(おやこ)
もうすぐ出産する妻をT県にある妻の実家に送った帰りの事でした。
初めての妊娠でもあるし、色々世話をしてくれ気も遣わない実家で過ごしたいとの事。
私がいない間に何かあったらといつも心配していたので、常に人のいる実家なら私も安心出来ると賛成しました。
その妻の実家で思わぬ歓待を受け、帰りが深夜になってしまったのです。
古い街灯がちらほら並ぶ田舎道を独り車で走っていると、街灯の下で手を上げている男がいました。
この道は歩くには長い一本道、どうしてこんな所に人が居るんだろう?おかしいな?と思ったんですが、良く見ると小さな女の子を連れていたので心配になって止まってしまったのです。
すると近寄って窓に顔を寄せて来るので、窓を開けて
「どうしました?」と尋ねました。
「ここまでずっと歩いて来たんですが、思いがけず車のライトが見えたので。この通りを抜けるまでで良いので乗せて頂けませんか?」
父親は三十代前半くらい、ポロシャツにチノパンでキャリーケースを引いていて。娘さんは四才くらい、暗い道が恐いのかな?父親の足にグッと顔を埋めてしがみついていました。
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