第一章 始まりの闇

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「あなたは死にました」  私はどうやら、死んでしまったらしい。目の前にいる女がそう言うのだ。  ここがどこかはわからない。ただ足場のある闇としか言えない。  闇の中には私とその女しかいないことが、肉眼でわかる。 暗いけど見えるのだ。光もないのに。 「それで、これから私は何が出来るんだ?」  女は微笑んだ。始めからずっと笑んでいる。 「物分りのよい方で助かります。現状を認めてくれない方が多いので」  反抗する手立てがないだろ。ある程度の記憶と人格はあるようだが、 日常生活に関する、最低限のことだけしか思い出せない。 もちろん死因なんてことも。  名前、年齢、生年月日、一切思い出せない。  いや、何だろう、奪われているという感覚。頭の中に入っていない気がする。  そんな状態で今を否定しても仕方ない。  どうやら夢でもないらしい。腕に爪を立ててみたが、痛覚はある。
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