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「あなたは死にました」
私はどうやら、死んでしまったらしい。目の前にいる女がそう言うのだ。
ここがどこかはわからない。ただ足場のある闇としか言えない。
闇の中には私とその女しかいないことが、肉眼でわかる。
暗いけど見えるのだ。光もないのに。
「それで、これから私は何が出来るんだ?」
女は微笑んだ。始めからずっと笑んでいる。
「物分りのよい方で助かります。現状を認めてくれない方が多いので」
反抗する手立てがないだろ。ある程度の記憶と人格はあるようだが、
日常生活に関する、最低限のことだけしか思い出せない。
もちろん死因なんてことも。
名前、年齢、生年月日、一切思い出せない。
いや、何だろう、奪われているという感覚。頭の中に入っていない気がする。
そんな状態で今を否定しても仕方ない。
どうやら夢でもないらしい。腕に爪を立ててみたが、痛覚はある。
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